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前向け思考力。

平々凡々の女子高生と平々凡々の中坊の息子の平々凡々の母の不定期日記です。

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旦那さんの夢

夢の中で旦那さんは競馬場にいた。
競馬場に行ったことなんかないのに競馬場にいた。
競馬場にいるのに馬券はもっていなかった。
馬場は陽炎がゆらゆらしていた。
レースはもう始まっていた。
向こう正面を走る馬達。
と、先頭を走る馬、なんかへんだ。旦那さんは思った。
その馬は短足。
おまけに顔が大きい。
胴体が長くて、おなかが大きい。

第三コーナーを周ってこっちに向かったところで、
旦那さんは確信した。

あれはロバだ。

パッカパッカとサラブレット。
ドッタバットとロバ。

でも、何かへんだと思っているのは旦那さんだけらしく、
周りのお客は馬券を握りしめ、目当ての馬にはっぱをかけていた。

鬣、サラサラ、サラブレット。
鬣、バサバサ、ロバ。

正面ストレートをロバは先頭を走りきって2周目1コーナーに向かった。
後続の馬達が巻き上げる砂埃にロバの姿が消えそうになった。
その瞬間、旦那さんはその後姿に覚えがあった。

腐ちゃん?腐ちゃんじゃない?

第二コーナーを抜けて一頭ずつの姿が見えてきた頃に
旦那さんは確信した。
足が短く、顔が大きく、鬣を振り乱し、ちょっと涎が出ている。
でもそんなことは関係ない。
どのサラブレットよりも一番一生懸命。
サラブレットの中に混じって、めちゃめちゃ一生懸命走っている。

向こう正面を走る間にロバの腐ちゃんは
後続の一頭に体半分まで追いつかれた。
それでもロバの腐ちゃんは顎を突き出しながら、
ハンハン言いながら走っている。
そのまた後続のサラブレットも徐々に徐々に近づいてきた。
それでもロバの腐ちゃんは涙をチョチョギラセながら
死にもの狂いで走っている。

第三コーナーでコーナーの内側に居る分、腐ちゃんは先頭を死守した。
最終コーナーに入って、重なり合ってどの馬が一番かわからなくなった。
最終ストレートにきたときには、
旦那さんはポロポロと涙を流していた。
腐ちゃんは旦那さんの娘で宝物だ。
奥さんなんかよりずっと旦那さんの気持ちをわかってくれる。
小さいときからピアノを習っていたわけではない。
お父さんとお母さんがフランス語を話せるわけではない。
お家がお金持ちでもない。
腐ちゃんはサラブレットじゃないけど、
サラブレットに混じって、一生懸命、一生懸命に走っている。
一番一生懸命走っている。

ドッタバッタとロバ。
鬣、バサバサとロバ。
ドッタバットとロバ。
鬣、バサバサとロバ。
一番一生懸命にロバ。
腐ちゃんは今、自分のために走ってるんだ。
と、旦那さんは思った。

「腐ちゃん!」
と旦那さんは叫んだけれど、がんばれとは言わなかった。
最後まであきらめるなとは言わなかった。
ただ、ポロッポロと涙が流れた。

気がつくと周りのお客は誰も居なくなっていた。
ハズレた馬券がいっぱい散乱していて、
風で舞い上がった。
腐ちゃんは一人、馬場のフィールドに居た。
黄色いタンポポのそばにいた。
なんか食べているのか、口がムシャムシャ動いていた。
腐ちゃんはとても幸せそうだった。
旦那さんもそんな腐ちゃんを見てとても誇らしかった。
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